「四戒」 トレードに応用できる剣道で戒められる四つの感情とは?
私は剣道をしています。現在は四段になりました。
まだまだ修行中の身ですが、剣道をしているとトレードに通じるところがあるな、と思うことがしばしばあります。
今回は、その中でも特にトレードに役立つ考え方である
「四戒」についてご紹介します。
一眼 二足 三胆 四力
剣道では、
一眼 二足 三胆 四力(いちがんにそくさんたんしりき)
という順番で重要な要素が並んでいます。
一眼・・・相手の動き、気持ちを察する眼
二足・・・すべての動きを支える足
三胆・・・胆力。いかなる状況にも動じない強い心
四力・・・力=技。体捌きと竹刀操作から繰り出される技
この順番通り、特に大切なのが「眼」です。
そして、眼は物理的な体の動きだけでなく、
相手の考えていること、思考を読み取ることにも使われ、
相手の思考が乱れたところを狙うことが効果的に一本を取るためには必要です。
それでは、相手の思考が乱れたところを狙うというのは、
具体的にどのような状態を狙うことなのでしょうか?
四戒
そこで登場するのが、「四戒(しかい)」です。
四戒とは、読んで字のごとく、四つの戒めるべき感情のことであり、
自分が相手に対する時は四戒が生じないようにしなければならず、
逆に相手に四戒が生じたところを逃さず攻め立てなければなりません。
四戒は以下の四つの感情から構成されています。
驚・・・おどろき
懼・・・おそれ
疑・・・うたがい
惑・・・まよい
それぞれをトレードと関連付けて見てみましょう。
驚
予期しない相手の動作に驚く時には、一時心身が混乱し、正当な判断と適当な処置を失い、その甚だしい時は呆然自失する場合がある。
予期しない事態に驚いて、心身の活動が乱れ、正常な判断と適切な処置がとれず、
為す術のない状態になる。
(出典:全日本剣道連盟 学科試験教本)
相場が自分の予想もしていない方向に動いた時には、どうすればよいのかわからない状態になることがあると思います。
また、人間の意識の集合体である大衆心理においても同様で、
誰もが予想もしていないパターン、反転すると皆が思っていたところで逆に行く、
こういったサプライズが起こると、逃げや損切、飛び乗りなどが連鎖して大きな動きになることがあります。
予め、あらゆるパターンのシナリオをあらかじめ準備して、
「驚」の感情が発生しないようにしておけば、
皆が茫然自失にの状態になっているところをチャンスに変えることができます。
懼
恐怖の念が一度心中に起ると、精神活動が停滞し、甚だしいものは手足がふるえ
その働きを失うものである。
恐怖の事で、相手を恐れて、精神の状態が停止し、四肢が震えて自由な動きをうしなう。
(出典:全日本剣道連盟 学科試験教本)
私は、相場を始めてすぐにリーマンショックに遭遇しました。
その時はまだ損切などという概念すら知りませんでしたし、
何度かナンピンをしてプラテンして儲かっていたので、
安値で買っていけばすぐにプラマイゼロにして逃げられると思っていました。
しかし、相場は下げ続け、100万円を超える含み損を抱えました。
その当時はまだ学生でしたから、その恐怖は計り知れないもので、
夜も眠れない日々が続きました。
恐怖で値動きを見ることもできず、
ただただアルバイトして得たお金を口座に入金して、
ロスカットを回避しようとすることしかできませんでした。
その経験をしてからは、損切を覚え、
傷が大きくなる前に確実にカットするようになりました。
トレードにおいては、「恐怖心」を抱く状況に身を置かないことが最重要です。
逆に、大衆が恐怖に駆られている時はチャンスです。
恐怖がピークに達した時、大衆の投げの損切が大量に出て、
いわゆるセリングクライマックスが発生します。
(FXの場合はバイイングクライマックスもベア派の逃げの場合があります。)
そこを順張りで狙うもよし、頂点からの反発を逆張りで狙うのもよしです。
自分が恐怖に駆られていなければ、冷静にチャンスを捉えることができると思います。
疑
疑心ある時は、相手を見て見定めがなく、自分の心に決断がつかず、敏速な判断、動作ができない。
相手の気持ちや行動をあれこれ疑い、平静な判断を下せず、決断がつかない状態である。
(出典:全日本剣道連盟 学科試験教本)
トレードで安定的に勝つためには「検証」が不可欠です。
勝てるパターンを見つけ出すことは勿論ですが、
エントリーした場合に、
・損切ラインに対してどれくらいの比率で思惑方向に伸びるのか?
・平均保有時間はどのくらいか?
・勝率は?
などのデータを自分の中にしっかりと持っておいて、
エントリーとエグジットに対する複数のシナリオを用意し、
「トータルで自分が勝てる」と確信できる場合にのみポジションを持たなければなりません。
そういった判断がつかないところ、
つまり、相場がどのように動くか全く予想がつかず、
疑念が心の中に渦巻いている状態でエントリーすると、大抵失敗します。
勿論、完璧に相場を予測することなどできませんが、
エントリー後に相場が取るかもしれない動きのすべてのパターンを予測しておくことで、
相場に対する疑念の気持ちはかなり軽減されるはずです。
大口のトレーダーは、こういった大衆の疑念が集中する方向感の無い相場(レンジ)などに資金を入れて騙しのブレイクを誘発し、
ある程度大衆を振り回すことができますが、
我々個人トレーダーにはそのような資金力はありません。
大衆が疑念に駆られているところに大口のクジラが突っ込んでいって、
一斉に同じ方向に逃げ出すところを狙うと優位性が生かせると思います。
惑
惑う時は精神が混乱して、敏速な判断、軽快な動作ができない。
心の迷い。こころが迷うときは精神混迷、敏速な判断や軽快な動作を為すことができない。
(出典:全日本剣道連盟 学科試験教本)
剣道には「捨身で打つ」という教えがあります。
しっかりと相手を攻めて、隙を見つけ、
「ここだ!」というチャンスを見つけることができたら、
失敗したらどうしよう、とか、逆に相手に打たれたらどうしよう、とか、
そういったことは一切考えることなく、
「これで失敗しても、相手に打たれても仕方ない」
と割り切って、捨身で技を出すことこそが、技を決めるために一番大切だという考えです。
トレードにおいても、十分な準備をしてシナリオを作り、
しかるべきところでしかるべきパターンが出たとしたら、
そこでエントリーして負けたのなら仕方がない、と割り切って、
迷わず飛び込むことが大切だと思います。
そこで迷ってタイミングを逃してしまうと、
取れるべき利益を取り逃すことになり、損失の補填ができなくなり、
トータルで負けてしまいます。
相場に確実なものはありません。
どれだけ自信のあるパターンでも負けることはあります。
しかし、十分に検証をした手法なら、トータルでは勝てると信じて、
最後は「捨身」で飛び込むことが必要なのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
剣道の「四戒」
トレードに通じるところがかなりあったかと思います。
自分が相場に対する時は、四戒が生じないようにしなければなりませんし、
逆に、大衆が四戒に囚われる所を狙っていけば、
効率的に利益を出すことができるようになると思います。
ご参考になれば幸いです。
では!